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「聖家族」

エル・グレコ (1590-95年ころ)

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 劇的な色と形の雲の下、その雲の色よりもっと劇的な運命を背負った家族が、一種パセティックな色合いで絵画化されています。

 いたいたしいほどに美しく清らかな、スペインの若い娘の生き生きした雰囲気をよくうつしとった聖母マリア・・・その頭部を囲むように切り開かれた雲と、そこにのぞく深い空の色にみごとにマッチした顔立ちです。そして、彼女の後ろからそっと手を伸ばして幼な子イエスの足を支える優しい表情の聖ヨセフ、またマリアの横でイエスの頭にそっと手を置いて、その顔を真剣にのぞき込む聖アンナ・・・。授乳する聖母を囲んで、その夫や母がそれぞれの表情で描き込まれ、ここには家族の暖かい、確かなきずなが感じられます。

 グレコが描く人物は、みな本当に細長い顔をしていて、間違いなくデフォルメされていると思っていたのですが、実際にスペインを訪れた人の話では、このマリアと同じような顔をした若い女性がいくらでもいるそうで、なんだかクラクラしてしまいます。グレコの目が意外にも真実を見、真実を把握しているらしいことを感じたとき、彼の表現する神秘や奇跡が、実は彼だけが知っている現実なのではないかという想いにとらわれ、再びめまいを感じてしまうのです。

 どの聖母子像でも、マリアの手の動きは宗教的な意味を持っていますが、この作品では四人の人物の手の動きがそれぞれに意味深く描かれていて、四人の手が連動して輪をつくっている様子が、何か、この上ない安心感を醸し出しているように思えるのです。ここには、特別ではない、ごくどこにでもある家族のやさしい心の交流がひっそりと描かれています。 

★★★★★★★
トレド サン・ファン・バウティスタ病院蔵



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