• ごあいさつ
  • What's New
  • 私の好きな絵
  • 私の好きな美術館
  • 全国の美術館への旅

「オーヴェールの階段」

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ (1890年7月)

ジャンプ

ここをクリックすると、作品のある
「WebMuseum, Paris」のページにリンクします。

 正面奥の赤い屋根の家に向かって視線が収斂されていくような、抽象画の2,3歩手前のようにも思える作品です。ゴッホ独特の黄色や青よりも、緑の使用が多く、「さわやか」と言ってもよい色彩です。

 中央の2組の女性は、どこかユトリロっぽくて、ある意味で、これまでのゴッホの作品にはなかったオシャレな感じが漂います。赤い屋根の家以外は画面全体がゆらゆらと揺れていて、やはりゴッホの心の揺れがそのまま作品になっている・・・という感じですが、それが狂気をはらんでいるようにはとても思えません。おそらく、死の本当に直前の作品だと思われます。でも、ごく静かです。

 2カ月弱のオーヴェール時代に、ゴッホは70余点の油彩を残していますが、その中にはオーヴェールの町並みを描いたものが少なくありません。その中のこの作品は風景画ではありますが、ゴッホの作品にしては人物が多く、わりと平和な町の雰囲気です。
 ゴッホ自身、決して人嫌いではなかったし、むしろ愛情に飢えていたと思います。人恋しかった・・・と言っても良いでしょう。ただ、彼の狂気というよりも天才が、彼から人を遠ざけたのかも知れません。

 ここに描かれた人物たちは、ゴッホの人恋しさの表れなのではないのでしょうか。ごく自然に、この中に存在したい・・・と願ったのかも知れません。
 そして、中央の階段は、アルルの光を象徴していた黄色です。ゴッホの心の中では、実はこの階段はずっとずっと天高くまで伸びていて、彼は軽々とした足どりで、一気にそこを駆け上がりたい・・・と思っていたのかも知れません。

★★★★★★★
セントルイス美術館蔵



page top