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「モンマルトルの畑」

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ (1887年6-7月)

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 ゴッホが明るい光を少しずつ身につけ始めたころの、色彩にあふれた風景画です。パリに来て初めて印象派の作品にふれたゴッホは、そこから大きな影響を受け、また触発されたようです。

 この前年、印象派の展覧会に、スーラの大作「ラ・グランド・ジャット島の日曜日の午後」が出品されて、新印象派時代の幕開けとなったこともあり、この「モンマルトルの畑」はスーラを相当意識した作品になっています。ゴッホはここで点描画風の作品を試み、色彩も印象派風で、明るくやさしい雰囲気に仕上がっています。

 ただし、ゴッホの作品は、正確にはスーラのような点描画とは違っているようで、点描と言うよりは、長方形や楔形の線を並列に置いたような感じになっています。
 そして、ゴッホは意識しなかったかも知れませんが、前景の川の流れのような、うねるような道の表現は、どこか晩年の「オーヴェールの教会」や「オーヴェールの階段」での道のイメージを思い出させます。
狂気と死の脅迫観念は、すでにゴッホの精神沃野に形として表れ始めていたのかも知れません。

 ゴッホの病気については、てんかん説と精神分裂病説、そううつ病説に分かれるようですが、ゴッホの芸術がただ単に彼の狂気の所産であったとは、やはり考えたくないと思っています。そういう割り切り方で彼を定義するのは安易過ぎると思うのです。
 実際、ハンス・プリンツホルンの著書「精神病者の造形作品」には、精神を病んだ人の芸術的な作品が多く紹介されていますが、色彩にしても形態にしても、ゴッホ的な作品は見当たらないと言われています。
つまりゴッホは、よく言われるように狂気ゆえの天才と言うよりも、常人では考えられない情熱をもって、するべき仕事をコツコツと重ねていった努力の天才である部分が大きいのではないでしょうか。

 もちろん、ゴッホの中に病気が発現したと思われるころから明らかに作風の変化が見られ、色彩の画家となっていったことも否定出来ません。彼はもしかするとほんの少し、神の光をとらえる力が凡人よりまさって生まれてしまった人なのかも知れません。
 だからこそゴッホは、この作品に見られるような印象派風の影響だけでは満足せず、やがて彼らを超える画家となってゆきます。

★★★★★★★
アムステルダム市立美術館蔵



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