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「出産の聖母」

ピエロ・デラ・フランチェスカ(1480年)

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 二人の天使が両側から天幕を開いて、母になろうとするマリアが静かに歩み出そうとしています。
 舞台劇を見るようなこの作品は、イタリアの画家ピエロ・デラ・フランチェスカの手による、少し変わった聖母子像です。変わっているのは、イエスがまだこの世に生まれていないという点であり、マリアが主役であるということです。

 威厳と畏敬に満ちた瞬間の、けっこう堂々と妊婦さんしたマリアさまです。すでにスカートの脇が止まらなくなっている様子で、その体型だけ見ると、電車に乗ったとたんに空いた席を物色しそうな感じです。しかし、その表情はとても内省的で、少なからず悲しそうですらあります。わずかに伏し目がちなのは、地上の人々への愛と、自らの責任の重さを想ってのことなのかも知れません。

 自分の中で胎動する新しい命を、手放しで迎えるという気持ちになりきれないマリア・・・。でも、それはイエスの母としての宿命とも言い切れないのかも知れません。どんな女性でも、はじめて母になるときは、喜びよりも不安のほうがずっと大きくて、ふと、この作品のマリアのような悲しげな表情になってしまうものなのではないでしょうか。
 神の意志に逆らわず、素直に運命を受け入れようとしているマリアに、少しでも多く幸せな時が与えられるように、祈らずにいられなくなる印象的な作品です。

★★★★★★★
モンテルキ 墓地礼拝堂蔵



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