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「三賢王の礼拝」

レオナルド・ダ・ヴィンチ (1481-82年)

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「WebMuseum, Paris」のページにリンクします。

 多くの画家がテーマとしてとり上げている「三賢王の礼拝」をダ・ヴィンチはこんなふうに描いています。
 幸せそうの幼な子イエスを見やるマリアのやさしさが、その眼差しや手の動きに示されていて、少し背景の描写がドラマチック過ぎるのですが、とても美しい作品です。
 遠景に描かれている馬たちのダイナミックな動きは、彫刻家レオナルドの顔が垣間見える気もしますし、やはり普通のマギの礼拝とは趣きを異にしていて、たいへん印象深い作品となっています。

 ところで、この絵の制作工程はかなり複雑です。この祭壇画は木のパネルに描かれているわけですが、下塗りに工夫がこらされています。
 まずジェッソ(パリ石膏)をパネルに重ね塗りしてから、それを平らに削ってならし、この上に地色を重ねたか、それとも下塗りをしたと言われています。下塗りの段階ではほとんど黄色か茶色ですが、この上に、ダ・ヴィンチは絵の全体的な構成と人物やものの輪郭を描いているのです。そして、背景は、そっけないくらい大ざっぱな素描なのですが、前景の人物は黒の絵の具で造形され、衣服のひだにまで配慮がなされています。
 また、特筆すべきはハイライトを使い始めていることなのです。幼いイエスやそのすぐ横の老人の顔に、特にはっきりとハイライトの効果が見られます。
 このように、ダ・ヴィンチは絶えず絵画の中に、新しい試みを重ねていった画家なのです。ダ・ヴィンチにとって、絵画の技術は、思索によってみがかれるものでした。

 彼は、絵画が他の芸術よりもすぐれていると信じていたようです。
「すばらしい絵を見るために人々は巡礼をするが、一つの詩を読むために何キロも旅をする人はいない」
とまで言っていたことでも、それがわかります。
 ここまで絵画を愛したダ・ヴィンチに完成作が少ないのは、素描の段階で自らの知的な問題に満足を得てしまうと、わざわざ技術的な完成をさせる必要がなくなってしまったからなのかも知れません。彼の頭の中で、作品はすでに完成してしまっていたということでしょうか。

★★★★★★★
フィレンツェ、 ウフィッツィ美術館蔵



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