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「パラス・アテネ」

グスタフ・クリムト (1898年)

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 幻のように暗い背景からボウッと浮かび上がった国家の守護神アテネ。女神の神秘性を強調する金箔と絵の具の併用で、なんて華麗な作品…と一瞬目をうばわれますが、徐々に目が慣れて、彼女の両眼に視線がたどりついたとき、思わず心が凍りつきます。
 口元がわずかに笑っているようでもあるのですが、その眼の光はひどく残忍で、目的のためならばすべての感情を取り去って、ある意味、真に純粋に獲物を引き裂くことに躊躇しない、氷のような眼なのです。
彼女が知恵と諸学芸をつかさどる最高の女神でありながら、これだけの凄まじさを感じさせるのには、その出生の物語に秘密があるのかも知れません。

 ローマの主神ユピテルは、最初の妻が身篭ったとき、次の男児がユピテルの王座を奪うという予言を受けます。そのため、彼は、その妻を呑み込んでしまいます。しかし、その後、ユノとの間に生まれた火の神ウルカヌスに額を斧で叩き割られてしまい、その傷口から飛び出して来たのが完全武装したアテネであったのです。
 またパラスという言葉の由来は、巨人ギガース族とオリュンポス神族との戦いで女神アテネに殺されたパラスから来ていると言われています。アテネはパラスの皮を剥ぎ取り、鎧にして、その翼を脚につけたと言われていますから、こうなるともう、彼女を単なる普通の女性神と見なすには、ちょっとコワイ気がしてきます。アテネはみごとな戦略の女神であり、英雄たちに戦術を指示し、そして有名なトロイア戦争では、ギリシャ方にちからを貸したりもしたのです。

 また、ちょっと面白い表現として、アテネが右手に持っている小さな像は勝利の女神ニケであり、彼女の鎧の胸に埋め込まれた不思議な顔は、怪物メデューサの首です。これは英雄ペルセウスの怪物退治に知恵を授けたことのお礼に貰ったものと言われていて、さすがにそんなところは可愛いな、贈り物はちゃんと身につけているのね…などと思ってしまいますが、それがメデューサの首となると、やはり、うーん…という感じです。
 また、よく目をこらして見ると、彼女の左手の上からこちらをじっと見つめている二つの目をみとめることができます。これは知恵の象徴フクロウであり、アテネの代表的な持ち物とされています。

 ギリシャの最高の女神でありながら、このアテネはまるで闇の戦士のごとく不気味で….そして、限りなく装飾的で、威圧的で、一言では言い尽くせない魅力にあふれているのです。

★★★★★★★
ウィーン市立歴史博物館蔵



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