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「ソニヤ・クニプスの肖像」

グスタフ・クリムト (1898年)

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夢のようにフワーッとした衣装で首まできっちりと包んだ本当に本当に美しい婦人が、今にも立ち上がってこちらに歩み寄って来そうにしている….その一瞬をとらえたような、クリムト最初の肖像画の大作です。
クリムトと言えば、まず恍惚とした表情の官能的な女性を思い浮かべてしまうのですが…. この凛とした清潔感の漂う女性像には目をうばわれます。クリムトの本質を見てしまったようで、それまでクリムトに対して持っていたある種のイメージが音を立てて崩れるような清冽な印象が残るのです。
彼女の名はソニヤ・クニプスといい、ウィーンの名流婦人の一人でした。ソニヤはクリムトが愛情をもって仕上げたこの絵を、もちろんとても気に入っていたのでしょう。アール・ヌーヴォーふうの彼女の別荘に、いつも掛けて楽しんでいたようです。実際のソニヤは、やはりなかなか美しい人だったそうですが、この肖像画よりは少し太っていたと言われています。
この作品で、クリムトはウィーン画壇での地位を確定します。そして、本格的な、肖像画家クリムトの誕生ともなるわけです。
また、145 × 145cmという大きさの半分が黒の背景…というのも、斬新ですが…… それがよけいに、彼女の美しい白い顔、くっきりとした目鼻立ちを決定的に引き立てています。
しかし、この、彼女の背後の闇は、本当は何なのでしょう。ここは室内でありながら、彼女の生活する場というのとは違う…もっと、名付けようのない抽象的な空間のような気がします。
もっと言えば、クリムトのなかにある死の世界…彼が無意識のうちに生涯持ち続けた、やさしく孤独で、そして端正な彼岸の入り口のような気がしてくるのです。

★★★★★★★
ウィーン、 国立オーストリア美術館蔵



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