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「オイディプスとスフィンクス」

ギュスターヴ゛・モロー (1864年)

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 はじめて見たとき、この絵はいったい何だろう・・・と思いました。
 オイディプスにへばりついたようなスフィンクスの姿が、あまりにも突飛で、強烈だったからです。細部の描写の細かさが本当にモローらしくて、現実離れした神秘の世界が一大叙事詩となった大作です。

 この作品の画題は、古代ギリシャの悲劇的な伝説の一つで、新古典主義の巨匠アングルも同じテーマで描いています。通りかかる人に謎を問いかけ、答えられない人を片っ端から殺していたスフィンクスと、彼女のもとに向かったオイディプスが対峙した様子がドラマティックに描かれているのです。
 謎を解けるはずがないという自信をもって、オイディプスに飛びかかった瞬間、意外にも彼の口から正解がもれ、ピクリと動きを止めたスフィンクス。その二人(一人と一匹?)の間に流れた緊張の一瞬が、永遠に凍結されたような作品です。
 スフィンクスは半人半獣の怪物ですが、その顔は気品にあふれた美しさで、オイディプスもまたルネサンス風の優美な長髪を持つ、若く美しい青年です。その、男女のプロフィールの対峙という形で描かれたこの大作は、どこかとても官能的で、「それからどうなったの?」と、思わず身を乗り出したくなってしまうような魅力にあふれています。

 この作品が1864年のサロンに出品されたとき、ある批評家は、
「気むずかし屋の諸氏も、1864年のサロンが価値の低下をまぬがれたとすれば、それは『オイディプスとスフィンクス』に負うものであることを認めている」
と公言しています。
 それまで無名だった38歳のギュスターヴ・モローは、この一作で画家としての名を確立し、作品はナポレオン3世の甥ジェローム・ナポレオン侯に買い上げられました。

 モローにとって、若いころからアカデミックな絵画手法を学んだ影響は大きく、聖書やギリシャ、ローマの神話や伝説が最高のテーマであるという歴史画指向は、生涯を支配し続けていきます。そして、それはモローの精神世界を表現するに、最良のテーマであったのだと感じます。

★★★★★★★
ニューヨーク、 メトロポリタン美術館蔵



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