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「三賢王の礼拝」

ピーテル・ブリューゲル (1564年)

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 立派な贈り物を次々に受け、うやうやしく礼拝されている赤ちゃんのイエスは、すっかりご満悦….という表情で、しかも変にもののわかったふうな笑い方をしているようで、なんだかこちらも笑ってしまうのです。

 人々の日々の暮らし….人間的な営みに深い興味を抱き続けたブリューゲルは、こうした宗教画を描くときにまで、その現実的な視線を生き生きと躍らせているようです。ごく普通の、庶民的な聖母マリアと幼な子イエス…そして、その後ろに立っている白い髭の聖ヨセフの耳に何ごとか囁いている緑の頭巾の男は、
「たいへんな贈り物ですね、だんな」
などと言ってでもいるのでしょうか。なんということもない、ごく日常的な出来事のようにして、三賢人の礼拝を描いてしまうブリューゲルは、やはり凄い画家と言えます。
 周りで、驚いたような表情で見守る貧しい人々と三賢人の衣装の光沢の違いなど、とても丁寧に描き分けられていて、細かく細かく描くことを得意としたブリューゲルらしい心遣いの感じられる作品となっています。

 「すると、どうであろう、彼らがかつて上るのを見たあの星が先立って進み、幼な子のおられる場所の上まで来て止まった。博士たちはその星を見て、非常に喜んだ」
と、マタイによる福音書にある東方の三人の博士たちは、伝説によれば、ガスパール、メルキオール、バルタザールといって、青年、中年、老年として表現されることが多いと言われています。そして、そのうちの一人は黒人とされていて、時代や人種を超えて神の救いがおよんでいくことを表しているのです。
 その三人の賢人の捧げ物にもそれぞれに意味が籠もっていて、黄金は人類の王であるイエスへ、乳香は神としてのイエスへ、そして没薬(もつやく)は死の象徴としての受難のひとイエスへ…と言われています。

 しかし、自らの運命を知ってか知らずか、暖かい母の腕のなかで、けっこう生意気そうに笑っているイエスは、なかなか元気そうで、問題ない健康優良児…という感じで、なぜかホッとしてしまうのです。

★★★★★★★
ロンドン ナショナル・ギャラリー蔵



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