• ごあいさつ
  • What's New
  • 私の好きな絵
  • 私の好きな美術館
  • 全国の美術館への旅

「リンゴとオレンジ」

ポール・セザンヌ(1895-1900年)

ジャンプ

ここをクリックすると、作品のある
「WebMuseum, Paris」のページにリンクします。

 セザンヌといえば、まず静物画。清らかな色彩と、画家の考え抜かれた視点で描かれた静物画を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。セザンヌが「モダンアートの父」と称されるようになったのも、静物画に代表される、幾何学的な絵画の完成に負うところが大きいのだと思います。一見、何の変哲もない静物画が、本当はとても正確な計算のもとに描かれていると知るにつけ、セザンヌという人のただならぬ探求にただただ驚嘆をおぼえます。

 この「リンゴとオレンジ」は、セザンヌの静物画の中でも、最も華麗な作品だと思います。奇妙に右上にせり上がったテーブルの上に、セザンヌ独特の赤と黄色を基調とした美しい果物たちがコロコロと並べられています。それを白のテーブルクロスが引き立てて、この絵をより劇的にしてくれているのですが、よく見ると、ものの形はすべて複数の視点から同時に見たようにゆがんでいます。
 たとえば、果物台は横から見ているのに、皿の上の果物は上から見下ろした視点で描かれている、といった具合です。

 ですから、この絵は全然おとなしくしていません。絶えず私たちの視野の中でザワザワと動いて、自分が完璧な乱視になったような錯覚にとらわれてしまうのです。言うなれば、セザンヌは3次元の世界から取り出したリンゴやオレンジや水差しを、平面の上に組み立て直すことに成功してしまったのです。
 これは「平面の深み」と呼ばれ、「美術の奇跡の1つ」と言われています。彼の飽くなき努力が生み出した奇跡は、現在もなお、多くの画家に影響を与えていることは言うまでもありません。

★★★★★★★
パリ、 オルセー美術館蔵



page top