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「カード遊びをする2人の男たち」

ポール・セザンヌ(1890-92年)

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「WebMuseum, Paris」のページにリンクします。

 セザンヌは同じテーマを繰り返して描くことが多い画家です。「サント・ヴィクトワール山」「シャトー・ノワール」のシリーズは特に有名ですが、この「カード遊び」も、同じような構図で何点か描いています。グレーと茶が基調となった、霜が降りたようなタッチの渋い作品ですが、ところどころ塗り残しがあって、不思議なインパクトがあります。

 2人の男はカードに目を落としていますが、楽しんでいるふうでもなく、なんとなく表情が暗くて、2人の間に置かれた酒ビンからも、うらぶれた雰囲気が漂ってきます。
 これは、セザンヌの故郷・プロヴァンスの男たちを描いた作品ですが、彼自身が故郷を愛して描いた・・・というより、絵画の素材として面白い構図だから描いただけなのではないかという感じで、あらためてセザンヌの画家としての透徹した眼と精神を感じます。それは、人間的に冷たいということではなく、まさしくプロだということなのでしょう。セザンヌは、一貫してそういう画家だったのです。

 しかし、セザンヌが選んだ構図だけあって、この作品は革命的です。一見ありふれた田舎の光景ですが、よく見ると、伝統的な遠近法がなくなっています。テーブルは、横や上や複数の視点から同時に見たように落ち着かない感じで、前方にぐっと傾いていますし、向かい合った2人の男の曲げた肘は画面に対して平らに上下に並んでいるように見えます。

 見れば見るほど不自然なのに、それはそれで結局は均衡を保ってしまっている、セザンヌならではの幾何学的構図の大胆な試みです。

★★★★★★★
パリ、 オルセー美術館蔵



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