「二天使を伴う聖母子」

フィリッポ・リッピ (1465年)

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 まだ少女の面影を残す、本当に清らかな聖母マリア・・・そして、元気そうな天使たちにかつぎ上げられた格好の幼な児イエスもよく肥って、まだ赤ちゃんでありながら、すでに威厳に充ちています。
 

 フラ・フィリッポ・リッピ(1406年 – 1469年10月8日)はフラ・アンジェリコと並んで、フィレンツェの修道僧画家として有名です。ただ、敬虔な宗教者だったフラ・アンジェリコとは反対に、尼僧と駆け落ちして修道院を脱走するような、なかなかのナマグサ修道僧でした。
 そのせいか、リッピの描く聖母は世俗的で官能的なまでの美しさで名高く、みどり児イエスも柔らかい肉体を持った、愛らしい幼児として表されていることが多いのです。ですから、この作品の聖母マリアも清純な可愛らしさにあふれていながら、そのヘアスタイルなど、イタリア風の華やかさを見せてくれています。
 しかし、どうしたらこんなふうに髪を結え、ヴェールを留めておけるものなのでしょう。結っているところを見てみたいと思う方も多いことと思います。また、彼女の髷の頂部に空の色をした青い石が輝いていますが、これはマリアの聖性の象徴です。さらに頭部と胸元に小さな真珠が飾られ、マリアの清純さをさらに引き立てています。見る者の心をひたひたと満たしてくれるような美しさです。
 

 こんなに理想的な顔立ちの人がこの世に存在するなんて信じられない・・と思ってしまいますが、イタリアに行くと、こうした美女も街角でごく普通に見かけることができると言う人もいます。リッピの描く甘やかでどこか翳りのある美貌の聖母は、しかし実は庶民的で、その合掌する姿はつつましく、街角の小さなお御堂に今もひざまずいているのかもしれません。
 窓の外に広がる田園風景は明るく神秘的で、ダ・ヴィンチにも見られるイタリア・ルネサンスの一大特徴ともいえるものです。窓わくが絵画をかざる額縁のように描かれているのもリッピらしい楽しい工夫であり、遠近法が発展したルネサンス期に生まれた、だまし絵(トロンプルイユ)的効果をねらったものなのかもしれません。
 

★★★★★★★
フィレンツェ ウフィッツィ美術館蔵