• ごあいさつ
  • What's New
  • 私の好きな絵
  • 私の好きな美術館
  • 全国の美術館への旅

「二天使を伴う聖母子」

フィリッポ・リッピ (1465年)

ジャンプ

ここをクリックすると、作品のある
「Web Gallery of Art」のページにリンクします。

 まだ少女の面影を残す、本当に清らかな聖母マリア・・・そして、元気そうな天使たちにかつぎ上げられたかっこうの幼な児イエスも、よく肥って、まだ赤ちゃんでありながら、すでに威厳に充ちています。

 フィリッポ・リッピはフラ・アンジェリコと並んで、フィレンツェの修道僧画家として有名ですが、敬虔な宗教者だったフラ・アンジェリコとは反対に、尼僧と駆け落ちして修道院を脱走するような、なかなかのナマグサ修道僧だったようです。
 そのせいか、リッピの描く聖母は世俗的で官能的なまでの美しさで名高く、みどり児イエスも柔らかい肉体を持った、愛らしい幼児として表されていることが多いのです。ですから、この作品の聖母マリアも清純な可愛らしさにあふれていながら、そのヘアスタイルなど、イタリア風の華やかさを見せてくれています。
 しかし、どうしたらこんなふうに髪を結え、ヴェールを留めておけるものなのでしょう? 結っているところを見てみたいと思うのは、私だけでしょうか? また、彼女の髷の頂部に空の色をした青い石が輝いていますが、これはマリアの聖性の象徴だと思われます。そして、真珠かと思われますが、白い珠が頭部と胸元を飾っていて、その清らかさはマリアの清純さとともに、心をひたひたと満たしてくれるような美しさです。

 こんなに理想的な顔立ちの人がこの世に存在するなんて信じられない・・と思ってしまいますが、イタリアに行くと、こうした美女も、街角でごく普通に見かけることができるということですから、驚いてしまいます。リッピの描く甘やかでどこか翳りのある美貌の聖母は、しかし、庶民的で、その合掌する姿はつつましく、街角の小さなおみ堂にひざまずいているようで、本当に胸を打たれます。
 窓の外に広がる田園風景も明るく神秘的で、ダ・ヴィンチにも見られますが、イタリア・ルネッサンスの一大特徴とも言えるもので、窓わくが絵画をかざる額縁のように描かれているのも、リッピらしい楽しい工夫のような気がします。 

★★★★★★★
フィレンツェ ウフィッツィ美術館蔵



page top