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「舞台の上のバレエのリハーサル」

エドガー・ドガ (1874年)

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 写真のスナップショットのように、舞台の上でリハーサルしている踊り子たちの一瞬を美しくとらえた作品です。
 中央で、いま踊り始めたところらしい踊り子たちの肉体と精神の緊張、そして左側前景で、すでに踊り終えた少女たちの、ホッと緊張がゆるんだ瞬間・・・その一瞬の対照が鮮やかで、非常に印象的です。
 下からのフットライトに浮かび上がった踊り子たちは、色を抑えた幻想的な世界の中で、フリーズドライされたようにその動きを止めています。でも、彼女たちは、この次の瞬間には、すでに全く違う動きを見せているに違いなく、この一瞬は二度とない一瞬なのです。

 ドガは、舞台の中央で、今リハーサルの順番が来て躍り出した踊り子の、傾いた不安定な状態をとらえながら、同時に、その姿勢がすでに次の安定に向かって動きつつある、不安定の中の安定を描いています。これは、ドガ独特の世界なのです。彼は、「運動するもの」の瞬間をとらえることにすべてを捧げた画家だったと言えると思います。
 運動というものを簡単に定義すれば「あるものが今ここにあって同時にここにない状態」だと言われますが、ドガは運動するものの中の堅固なメカニズムとバランスから生まれる一瞬に魅せられ、探究することに飽くなき興味を抱き続けていたようです。

 この夢幻的な光の中の陶器人形のような踊り子たちも、ドガの絵筆によって一瞬ぴたりと動作を止め、彼女たちの意思とは関係なく、永遠に画面の中に凍結させられてしまったようです。

★★★★★★★
パリ、オルセー美術館蔵



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