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「聖アンナと洗礼者ヨハネと聖母子」

レオナルド・ダ・ヴィンチ (1499年ころ)

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 美しいマリアと幼いイエスを見守る聖アンナ。そして、さらに無邪気にそれを見つめるのは、幼い洗礼者ヨハネです。
 このテーマは、レオナルドがたいへん好んだもので、これに似た作品としては、未完成ではありますが、「聖アンナと聖母子」のような油彩画もあります。この作品も油彩画にするための下絵だったようですが、素描止まりで、制作されませんでした。
 しかし、なんてやさしく、幻想的な素描でしょうか。チョークによるものですが、ダ・ヴィンチはここに、群像の表現技術を修得しようとしていたようです。完成度の高い素描・・・と言ってしまって良いかと思います。

 ダ・ヴィンチにとって、素描は単なる油彩制作のための準備としてだけのものではなかったようです。むしろ、科学的研究の主要な手段としていたような感さえあります。
 彼は、素描に際して、いろいろな種類の筆記素材を使っています。チョーク、ペンはもちろんですが、特筆すべきはシルバーポイント(銀尖筆)です。レオナルドは、シルバーポイントを用いて特別製の紙に極細の銀の線を引いたのですが、それはきわめて微妙な仕事で、一度引いた線は消すことができません。そのため、その技術にはたいへんな正確さが要求されたわけで、こんなところにもダ・ヴィンチの天才ぶりを感じてしまいます。

 ところで、この作品の中で変に目を引くのは、聖アンナの異常に大きな左手です。明らかに他の部分とは違和感があり、後から描き加えられたのだという説さえあるほどです。
 実は、この謎めいた指し示す指は、ダ・ヴィンチの作品にはたびたび登場します。パリのルーヴル美術館にある「岩窟の聖母」の天使も、はっきりと洗礼者ヨハネを指差していますし、ダ・ヴィンチにとって、この指し示す指は、とても深い意味を持っていたと思われます。
 但し、たいていは、この「聖アンナと洗礼者ヨハネと聖母子」のように上を指し示していますから、これは明らかに天を・・・神を示す指と考えるのが自然だと思われます。
 神秘的でありながら、限りなくやさしく、暖かい味わいの、高貴な作品です。

★★★★★★★
ロンドン、 ナショナルギャラリー蔵



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