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「荒野の聖フランチェスコ」

ジョヴァンニ・ベッリーニ (1480-85年頃)

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 遠い山々、深い青から徐々にグラデーションを見せる空、固く泡立てたメレンゲのような雲……そんな遥か彼方までも、くっきりと澄明な空気感で見渡せる広大な風景の中で、法悦の表情で立ち尽くす聖フランチェスコは、まるで点景人物のように見えます。
 眼前の、あまりにもみごとな世界に声もなく、サンダルを背後に脱ぎ捨て、両の手のひらをゆっくりと開きます。この作品では、それと定かには判りませんが、彼の手のひらには聖痕が見てとれるかも知れません。聖フランチェスコの場合、両手、両足、脇腹の、キリストの傷に相応する5つのしるしによって、しばしば見分けられるのです。

 1224年、アルヴェルナ山に引き籠もった折、多くの幻視を経験している彼は、6つの翼を持ち、両腕を広げた姿の天使を見ます。そして、これを見つめるうちに、聖フランチェスコの体にキリストと同じ5つの聖痕が現れたと伝えられているのです。そんなところからも、この聖人がいかに神に愛された存在として親しまれたかが判ります。
 また、もう一つの彼の大きな特徴として、腰帯の3つの結び目があります。これは、清貧、童貞、服従の、聖人の3つの宗教的誓願を表しています。そこには、小さき兄弟修道会を創設した、聖フランチェスコの基本理念がこめられているのです。聖フランチェスコに関するたくさんのエピソードとともに…….彼の穏やかで信仰心のあつい人柄が伝わってくるようです。

 聖なる大地に裸足で立つ聖人を、叙情的で光に満ちた清らかな世界に描いたベッリーニは、色彩豊かな柔軟な絵画様式を、研究を重ねながら築き上げた、15 世紀ヴェネツィア派の重要な画家です。この、荒野に立つ聖人をめぐる風景表現も、イタリア・ルネサンスの絵画の中で最も特筆すべき、克明な作品として高い評価を受けています。それは自然の細部にまで注がれる優しい眼差しのなせるわざであり、そこにひそむ神の愛への、聖フランチェスコに姿を借りた、画家自身の篤い想いなのかも知れません。

★★★★★★★
ニューヨーク、 フリック・コレクション 蔵

 <このコメントを書くにあたって参考にさせていただいた書籍>
  ◎良寛と聖フランチェスコ―菩薩道と十字架の道 仏教とキリスト教の関係について
        石上・イアゴルニッツァー・美智子著  (新潟)考古堂書店 (1998-06-10出版)
  ◎西洋絵画の主題物語〈1〉聖書編
        諸川春樹監修  美術出版社 (1997-03-05出版)
  ◎西洋美術史(カラー版)
        高階秀爾監修  美術出版社 (1990-05-20出版)
  ◎西洋絵画史WHO’S WHO
        諸川春樹監修  美術出版社 (1997-05-20出版)  



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