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「聖母被昇天」

パルマ・イル・ヴェッキオ  (1512年)

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 心美しき聖母マリアは、その死後3日目、天使たちによって天へと導かれました。黄金色の光に包まれた聖母の穏やかな表情、それを見守る使徒たちの静かな群像表現に、鑑賞者の心までも平安で満たされていくようです。

 「聖母被昇天」のテーマは、聖母信仰が急激に盛り上がった13世紀ごろから、宗教美術の重要なテーマの一つとなりました。
 使徒たちが墓の傍らに座っていると、聖母の魂を携えた聖ミカエルを伴い、キリストが現れたといいます。そして、その魂が聖母の肉体に戻されると、聖母は自ら墓の外へ出て、一部始終を驚きをもって見守る使徒たちに見送られ、天使とともに天に昇っていったのです。
 しかし、パルマによって描き出された「聖母被昇天」は温かく親密で、あくまでも抑制のきいた表現となっています。そのため、このあまりにも劇的な出来事も、まるで夢の中の優雅なエピソードのように感じられます。数年後、ヴェネツィア派の前衛的な巨匠ティツィアーノは同じテーマで、天も地も躍動するようなドラマティックな祭壇画を制作しますが、それとは対照的な優雅さと言えます。
 それこそが、ヴェネツィア派の伝統を守るパルマらしさなのでしょう。安定した構図、調和のとれた心地よい色彩と親密さは、ヴェネツィア絵画の急速な発展の中にあって「穏健派」と言われた、パルマならではの表現なのです。

 パルマ・イル・ヴェッキオ(1480-1528年)は、もともとベルガモの出身でしたが、1510年にヴェネツィアに移り住み、以後、活発な制作をしています。
 彼の特徴は、二つの全く違うタイプの作品を多く手掛けたことかもしれません。それは、教会のための大型の祭壇画と、明らかに商業目的の、官能的な魅力にあふれた魅惑的な女性像でした。豊かな色彩で描き出されたそれらの作品たちは、当時の人々を魅了し、画家は多くの注文をこなし続けたのです。現在でも、 100点以上が認められています。
 また、パルマの忘れがたい特徴は、風景の詩的な表現です。彼は、穏やかな風景の中に、聖母子や聖人を描き込むことを殊に好んだようです。この爽やかで空気感に満ちた戸外の描写は、後世の多くの画家に影響を与えていくことになります。

★★★★★★★
ヴェネツィア、 アカデミア美術館 蔵

 <このコメントを書くにあたって参考にさせていただいた書籍>
  ◎西洋美術館
       小学館 (1999-12-10出版)
  ◎イタリア絵画
       ステファノ・ズッフィ、宮下規久朗編  日本経済新聞社 (2001-02出版)
  ◎オックスフォ-ド西洋美術事典
       佐々木英也訳  講談社 (1989-06出版)
  ◎図説 聖書物語 新約篇
       山形孝夫 著・山形美加 図版解説  河出書房新社 (2002-11-30出版)
  ◎西洋絵画の主題物語〈1〉聖書編
        諸川春樹監修  美術出版社 (1997-03-05出版)
  ◎西洋美術史
       高階秀爾監修  美術出版社 (2002-12-10出版)



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