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「死者の日」

ブーグロー  (1859年頃)

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 「わたしのもとに来る人を、わたしは決して追い出さない」
と、キリストは「終わりに復活させる」ことを約束しています。死を越えた命があることを告げる、招きの言葉なのです。
 しかし、この二人の婦人の悲しみの深さには胸を衝かれます。どんなに信心深くとも、主の御言葉を知ってはいても、やはりその悲しみは癒されることがありません。十字架の下に眠っているのは、二人の大切な身内なのでしょう。11月2日の「死者の日」の墓参で、二人は新たな涙を流します。
 二人が手にしているのは「死者の日」を象徴する菊で作った花輪のようです。二人の喪服に、生命力あふれる美しい黄色がやさしく映えます。さらによく見れば、葉を落とし始めた木々の向こうに広がる空の青さも、やがて悲しみから立ち直っていくであろう二人に、希望と祝福を与えているようです。ただひたすらの悲しみを描くのではない、フランス官展派の代表的な画家ブーグローらしい典雅で甘美な世界が展開されています。

 現在でも、ブーグローの作品はどれほど私たちを魅了し続けていることでしょうか。1850年、25歳のときにローマ賞を受賞し、54年のパリ万博で大成功をおさめたあとの彼は、パリのサント・クロティルド聖堂、ボルドーの大劇場、故郷ラ・ロシェルの大聖堂をはじめとして数々の公的な建造物の装飾に携わり、その熟練した高度な技術、考え抜かれた構成、色彩の妙によって、あらゆる栄誉と富を得ていったのです。
 彼に関しては、サロンへの出品を熱望していた印象派の画家たちを落選させ続けたことでも有名です。しかし、彼の絵に対する、そして仕事に対する真摯な姿勢、そしてその優雅な画風からは遠い、決して豊かでなかった生い立ち、神への一途な信仰心などを思うとき、ブーグローのなかにあった芸術に対する純粋な衝動を、私たちは深く感得しないではいられないのです。

 ところで、11月2日の「死者の日」は、仏教で言うところのお盆に似ているようです。先祖や亡くなった家族に、祈りを捧げる日なのです。この日人々は、家族そろって墓地へ行き、お墓を洗ったり、象徴である菊の花を飾ったりし、墓前で黙祷するのです。この習慣は998年にクリニュー修道院長オディロンによって始められ、11世紀には広くヨーロッパで行われるようになりました。
 もしかすると、信仰の人ブーグローは、ある年の死者の日に、これとよく似た光景を目撃したことがあるのかも知れません。ブーグローの1200点もの膨大な作品たちは、きっとみな画家の心の中で温かく醸成され、生み出されてきたものなのだろうという気がします。

★★★★★★★
ボルドー美術館 蔵

 <このコメントを書くにあたって参考にさせていただいた書籍>
  ◎ウィリアム・ブグローの生涯
        M.ヴァション著 米永輝彦編訳  東洋出版 (2001-05出版)
  ◎西洋絵画の主題物話〈2〉神話編
        諸川春樹監修  美術出版社 (1997-05-30出版)
  ◎西洋美術史(カラー版)
        高階秀爾監修  美術出版社 (1990-05-20出版)
  ◎西洋絵画史WHO’S WHO
        諸川春樹監修  美術出版社 (1997-05-20出版)
 



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