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「日曜日の夜明け」

アンジェロ・モルベッリ (1890年)

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 老人たちは、田舎道をミサへと急いでいます。早朝の光が輝きを増しつつある時間、すべてが清められ、すべてが生まれ変わっていくようです。

 アンジェロ・モルベッリ(1853-1919年)は世紀の変わり目において、象徴主義や未来派に安住することなく、社会の諸問題に深く注目して描いていった画家でした。彼の場合、ブレラ美術学校でロマン主義的なリアリズムを学び、その視線は主に田畑での労働、困窮する老人たちといった主題に向けられていったのです。
 太陽の照りつける田舎での重労働や疲弊した農民たち….というテーマは、19世紀イタリアに特徴的なものでもありました。そして、1870年に全土が統一されると、反アカデミスムともいうべき分割主義の手法が広まり、モルベッリ自身も個々の色彩を小さな筆触で画面に散りばめる、フランスの点描法に通じる画法で社会的な主題を描きました。彼は分割主義の技法を用いた最初の画家の一人だったのです。

 この作品は、過酷な労働を扱うことの多かったモルベッリにしては、穏やかで清澄な空気の漂う一作です。聖書を小脇に抱えた老夫婦の背中が語るものはあまりにも多く重いのですが、決して豊かではない彼らの厚く素朴な信仰心に、画家はどれほど支えられ、描く力を与えられたことだったでしょう。

★★★★★★★
個人蔵

 <このコメントを書くにあたって参考にさせていただいた書籍>
  ◎西洋美術館
       小学館 (1999-12-10出版)
  ◎イタリア絵画
       ステファノ・ズッフィ、宮下規久朗編  日本経済新聞社 (2001-02出版)
  ◎オックスフォ-ド西洋美術事典
       佐々木英也訳  講談社 (1989-06出版)
  ◎西洋美術史
       高階秀爾監修  美術出版社 (2002-12-10出版)



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