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「日がさ」

フランシスコ・デ・ゴヤ (1777年)

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 可愛らしい少女がペットの子犬を膝にのせて座り、その後ろから気取った感じの少年が日がさを差しかけて、彼女に影をつくってあげています。当時の上流階級の子女の間では、庶民ふうの衣装や遊びを楽しむことが流行していたということですから、そんなのどかで甘美な様子を描いたものらしい、外光にあふれた作品です。澄んだ明るい色彩と影の部分の対比が精妙で、緑の風の香りさえ感じさせてくれます。

 ゴヤという人は、とても不思議な画家で、その初期から晩年に至るまでの作品を眺めると、本当に全部、同じ人間が描いたものなのだろうか・・・と、信じ難い気持ちにさせられます。
 栄達のために、注文主の希望通りに描いた絵から、孤独と絶望の中で古代神話から想を得て描いた「わが子を食らうサトゥルヌス」のような、凄惨で胸をえぐられるような絵まで、その作風はたいへんに多様で複雑です。
 これには、スペイン人らしい光と影の混沌や情熱、そして過剰な上昇志向などが考えられると言われています。しかし、それよりも、ゴヤそのものの中にある多様な要素が、これだけさまざまな作品を生み出させたのだと考えたほうが自然なようにも思えます。

 この作品は、パルド宮食堂の間を飾るタピストリーのための、原寸大の下絵です。ゴヤ自身、栄達を目指してまず最初に得た職が、このカルトンの制作だったのです。初期の、さわやかさにあふれた作品ですが、すでにゴヤらしい生命感と空想力の芽が十分に感じられます。

★★★★★★★
マドリッド、 プラド美術館蔵



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