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「ライオンにおののく白い馬」

ジョージ・スタッブス (1770年)

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 彼は一瞬のうちに、死の恐怖で凍りつきました。行く手にぬっと現れたライオンを見て、白馬は反射的に急ブレーキを掛けたように四本の脚を踏ん張り、身体中の筋肉をこわばらせたのです。そして、そのたてがみは激しく翻り、彼がどれほど驚愕し恐怖しているかが、見る者にはっきりと伝わってくるのです。

 これは、馬を知り尽くしたスタッブスならではの、非常に説得力のある表現です。彼は18世紀イギリスの動物画家の第一人者でしたが、画家としてはほとんど独学で絵を学びました。
 1740-50年代、肖像画家として働くかたわら、解剖学を学び、とくに馬の解剖に専念して、その著書によってヨーロッパ中にその名を知られるようになったのです。「馬の画家」として名声を博した彼は、馬の肖像画、乗馬図、狩猟図などを数多く描き、ことにサラブレッドを描かせたら右に出る者はいないとさえ言われていました。

 18世紀イギリスでは、動物画がさかんに制作されました。これは、当時の貴族や上流階級における狩猟と乗馬の趣味に連動したものであり、そのため、テーマとして描かれるのはやはり馬が圧倒的に多く、次いで犬や鹿、キツネなどだったのです。この種の絵は、一般的な動物画と区別して「スポーティング・ペインティング」と呼ばれ、イギリス絵画に特徴的なものでした。
 ですから、このスポーティング・アートを得意とし、とくにイギリス貴族に好まれたサラブレッドの絵を科学的に、正確無比に描いてみせたスタッブスの作品は広く愛され、その力量は、馬そのものだけでなく、その背景にある自然との調和、そして緊張感もみごとに表現して見せてくれるのです。

★★★★★★★
リヴァプール(イギリス)、 ウォーカー美術館 蔵



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