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「プロセルピナ」

ダンテ・ガブリエル・ロセッティ (1877年)

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 この絵を目にしたことのある人は多いと思います。ロセッティといえばこの絵・・・という感じで、とても深みのある色彩の中に、皮膚の色だけが浮かび上がった、印象的なプロセルピナです。彼女の衣装の質感や光沢、また、しわの寄り具合なども素晴らしく、その美しさにはただただ感嘆するばかりです。

 プロセルピナとはギリシャ神話の中の女神ですが、プルートーによって冥界にさらわれ、そこでザクロの実を食べてしまったために、一年の半分を冥界で、もう半分を地上で暮らさなければならなくなった悲劇の女王なのです。その冥界の女王をロセッティはジェイン・モリスをモデルにして8点、まったく同じ構図で描いています。それはもちろん、夏は自分のもとで暮らし、冬は夫のモリスのいるロンドンで暮らすジェインをプロセルピナに重ね合わせて見ていたからなのですが、同じ構図で8点・・・と聞くと、少々うんざりしてしまうのも確かです。
 装飾的女性美を追究し続けたロセッティは、勤勉さと果敢さと寛容さをもって制作に当たっていたと言われています。しかし反面、親友でもあるウィリアム・モリスの夫人との恋愛関係をだらだら続けてしまう彼は、まさしく怠惰で、臆病で、ひどくいやな人間にも思えます。詩的情熱にあふれ、魅力的な人物だったという評価もあるようですが、何か偏執的で、猜疑心の強そうな印象がぬぐえません。

 ところで、ロセッティの描く女性は、みな髪が豊かで、唇と顎がやけに印象的なのですが、このジェイン・モリスはまた特別豊かな髪を持っています。本当に、こんな髪の女性がいるんだろうか、これはデフォルメされているに違いない・・・と、長い間思いこんでいたのですが、はじめてジェインの写真を見たときの感動は忘れられません。本当に、このように豊かに波打つ黒髪の持ち主だったのです。顔立ちも、ほぼこの通りで、顎や口元がキュッと尖っていました。はじめてロセッティがうそつきではないらしいことがわかって、このプロセルピナが急に女神から人間に姿を変えたように感じたものです。

★★★★★★★
ロンドン、 テイトギャラリー蔵



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