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「ピエタ」

マールテン・ファン・ヘームスケルク (1566年)

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 これが聖なる神の子の死なのかと、やや衝撃を受けながら改めて「ピエタ」というタイトルを確認せずにはいられません。死してなお美しいイエスの姿を見なれた目には、このピエタはやはりあまりにリアルな現実なのです。ヘームケルクという画家の容赦ない画力に圧倒されます。

 沈鬱な悲哀が見る者の心を深く揺さぶります。キリストの亡骸を囲む哀悼者たちはひしめくようにそれぞれの表情で、仕草で悲しみを表現しながら、斜めに流れるキリストの蒼白い遺体に沿って、リズミカルに配置されています。ザワザワと動きをとめない画面構成、そこに横たわる古代彫刻のような確固としたキリストの肉体表現にはミケランジェロの影響を見てとることができるようです。

 作者のマールテン・ファン・ヘームスケルク(1498年~1574年10月1日)はオランダの北ホラント州ヘームスケルクの地主の息子として生まれました。所属した工房の親方ヤン・ファン・スコーレルはローマ教皇ハドリアヌス6世に招かれてローマで働いた画家で、そのためヘームスケルクの作品にはイタリア絵画の影響が色濃く感じられます。その優れた技量を買われてみずからもローマで働き、帰国するまでローマの古代彫刻や遺物、同時代の多数の絵画、建築物にも強い興味を持ってスケッチを重ねました。この作品に見られるミケランジェロ的なマニエリスムを思わせる人物群も、こうした時期に画家が実際にかの巨匠の作品にふれていたことを思わせます。
 オランダに帰国したヘームスケルクはハールレムのサン・ルカ組合に入会し、教会から注文された祭壇画や絵画だけでなく、タペストリーやステンドグラスのデザインもこなして活躍しました。また、版画の原画家としても知られる実力者だったのです。

★★★★★★★
オランダ、デルフト プリンセンホフ博物館 蔵

 <このコメントを書くにあたって参考にさせていただいた書籍>
  ◎世界美術大全集 西洋編〈第14巻〉/北方ルネサンス
        小学館 (1995-07出版)
  ◎西洋絵画の主題物語〈1〉聖書編
        諸川春樹監修  美術出版社 (1997-03-05出版)
  ◎ビジュアル年表で読む 西洋絵画
       イアン・ザクゼック他著  日経ナショナルジオグラフィック社 (2014-9-11出版)



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