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「エンディミオンの眠り」

ジロデ=トリオゾン (1791年)

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 森の茂みにさす一条の月光に照らし出された青年はエンディミオン…..その男性とも女性ともつかぬ妖しい美しさは、飽くまでも官能的で硬質な輝きを放っています。
 美貌の羊飼いの若者エンディミオンはローマの主神ユピテルに不老不死を願い、それと引き換えに永遠の眠りを授けられました。そんな彼に、野山を支配する野生生物の守護神であり、獲物を求めて森の中を駆けめぐる乙女の狩人ディアナが恋をしたのです。そして、彼女は夜ごと、エンディミオンのもとを訪れ、木陰に横たわる恋人を抱擁したのです。
 この美しい神話と、眠りについた美青年エンディミオンの姿は、美の永遠性の象徴として、詩人や芸術家の想像力をかきたててきました。そして、その中においても特にこの作品は、「月の効果」というもう一つのタイトルも持つように、あえてディアナは登場せず、月光にうたれたエンディミオンとキューピッドの二人でつくる、緊張感あふれる画面となっています。エンディミオンを刺し貫くように照らす月の光そのものが、ディアナを象徴しているのです。

 ジロデ=トリオゾンは1785年、18歳のときにフランス新古典主義を代表する画家ダヴィッドの門下に入りました。しかし、その後5年間のイタリア留学を経て、その作風はロマン派的傾向を示すようになります。そこには、ロマン主義の先駆となった小説家シャトーブリアンの影響も大きかったと言われていますが、その著書から、師ダヴィッドとは違う、宗教性を背景にした感傷的で美しい表現に移っていくのです。
 この官能的な作品はイタリア留学中に制作を開始したもので、神秘的な光を大胆に新鮮に表現しています。そして、それはあたかも、彼の内側からあふれる若々しい情熱がディアナの恋心と重なり合って、美しいエンディミオンを一直線に射ぬいているかのように感じられるのです。

★★★★★★★
パリ、 ルーヴル美術館蔵



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