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「エイと猫と台所道具」

ジャン・バプティスト・シャルダン (1720-28年)

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 赤エイの生々しさがまず目にとびこんできて、一瞬ギョッとするような作品です。
 でも、よく見ているうちに、この作品に流れる透明な安らぎに、心の中がひたひたと満たされていくのがわかります。これは、気取りのない台所の生き生きとした情景なのです。

 毛を逆立てている猫は、まだぴくぴくと動いている台の上の魚を見て、思わず尻込みしてうなっているのでしょう。彼(彼女?)が牡蠣殻の上で踏んばっている様子は、なんだか滑稽で可愛くて、思わず笑ってしまいます。
 そして、その質感をとらえて光を内包し、整然と沈黙する瓶やテーブルクロスたちは、うるさい説明を与えられずにそこにただ置かれることによって生命を与えられ、画面の中に確かな構築性をもたらしています。

 この作品は1728年、ドーフィーヌ広場で開かれた「青年画家展覧会」に出品して注目を浴びたもので、シャルダンが王立アカデミーの会員に推挙され、即日入会を認められるきっかけとなった作品です。ラルジリエールをはじめとした多くの王立アカデミー会員たちは、この絵が17世紀のフランドルの名手の描いたものと錯覚するほどだと絶賛したと言われています。
 たしかにこの作品は、単なる静物画の枠を越え、むしろ風俗画的な生き生きとした生活空間の表現となっています。静物画といっても、ここに描かれているのは、決して「死んだ自然」ではないのです。

 シャルダンは、心をこめて、手のぬくもりをこめて静物画を描いた画家です。身近にある物たちが、日々の営みの中でかけがえのないものとして輝いていることを身をもって知り、その物たちに重みと威厳を与え、いとおしむことを知っていた画家です。
 それは彼が家具造りの職人の子であり、アカデミックな教育とは無縁であったことが大きく影響しているのかも知れません。職人の子が、自分の階層を超えずに学べるものを学び、眼にしたものを描くとすれば、どうしても身近なものを描くしかなかったとも言えます。
 だからこそ、シャルダンの描く絵には、心の底から温かさの感じられる、生きた日常生活の実感があるのだと思います。

★★★★★★★
パリ、ルーブル美術館蔵



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