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「手紙を書く女」

ヤン・フェルメール   (1665年)

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 手紙を書く手を止めて、少女がこちらを見て微笑んでいます。
 うきうきとした表情が、なんだかとても、こちらまで楽しくさせてくれます。きっと、大切な人への楽しい手紙なのでしょう。そうした便りをしたためるとき、女のコは自分でも意識しないうちに、こんな表情になっているのだと思います。

 フェルメールの描く室内画は日常の、それほど深刻でない場面が多く、一見、何気ない空間に女性たちが置かれているに過ぎないものばかりです。でも、画家の目はその生活空間をつきぬけて、透徹した眼差しで光の諧調・色彩の微妙な変化をとらえようとしています。つまり、フェルメールの目そのものが、対象の平明さとは裏腹に深刻なものであると言ってもいいかと思います。
 この「手紙」というテーマは、わりと繰り返し描かれています。「手紙を読む若い女」「青衣の女」などがそうですが、自分が書くのではなく読む立場になるとき、彼女たちはとたんに無口になり、じっともの思う人となります。そんな女性たちの微妙な心の動きも、フェルメールが描く光と影の推移は、みごとにとらえています。

 この「手紙を書く女」の場合、左手の奥が暗いことから、窓の鎧戸が閉められ、カーテンも引かれているらしいことがわかります。そうすることで人物がフワッと浮かび上がり、机の上の紙や小箱や首飾りから明るい帯が始まって、彼女の腕、衣装の白い縁取りを通って大粒の真珠のイヤリングまで、光の帯は流れていきます。穏やかでやさしい時間がゆっくりと流れていきます。  

★★★★★★★
ワシントン、 ナショナルギャラリー蔵



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