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「ブレダの開城」

ディエゴ・ベラスケス (1634-35年)

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 さわやかな空の青が美しい、ベラスケス中期の大作です。
 この作品が飾られた「諸王国の間」(現在の軍事博物館)はオリバーレス公の発意で建設されたもので、この大広間にはスペイン王家の威光と歴代国王の栄光を讃える大画面の大作が並んでいます。
 そんな中で、この作品は一般に「槍(ラス・ランサス)」という愛称で親しまれています。たしかに、たくさんの槍が林立している印象的な作品ですが、これは 1625年、スペイン軍がオランダの要塞ブレダで勝利した10周年を記念した作品なのです。

 中央に、城門の鍵を手渡すオランダの総督ナッソーと、それを温かく受け取るスペインの将軍スピーノラ・・・その左右に両軍を配した空間は壮大で、しばらく時を忘れてしまうほどです。私たちの視線は左端の人物から右手前の後ろ向きの馬へ、そして人物群を沿って楕円形を描きながら左背景へと、ごく自然に流れていきます。
 両軍を左右にきちんと配した画面全体の統一感、光と色彩のすがすがしい調和、前景から後景へと深まっていくブルーの美しさなど、どれをとっても言葉が出ないほどの、17世紀オランダ風景画を思わせる壮大な画面です。

 ベラスケスが生きた17世紀は、俗にバロック時代と呼ばれています。バロック美術の特徴は光と自然の動的構図・・・また、情熱、誇張、ダイナミズムなども重要な要素です。
 しかし、ベラスケスの画面は彼自身の解釈によって、それらはごく自然に消化吸収されてしまっているようです。そこには、ベラスケスらしい、どこかデカルト的な「厳粛な平衡ある精神」が反映されているようで、バロック美術という大きな流れまでも彼流に昇華してしまった偉大さを思うと、あらためてベラスケスという人物の透徹した精神性を見る思いがします。  

★★★★★★★
マドリード プラド美術館



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