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「アルジェの女たち」

ウージェーヌ・ドラクロワ (1834年)

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「WebMuseum, Paris」のページにリンクします。

 ドラクロワは、もともとその鮮やかな色彩に特徴のある画家ですが、この作品はまた、驚くほど色彩の明るさが増しているように思います。ほとんど、輝いている・・・と言ってしまって良いくらいの美しさです。

 1832年、ドラクロワはモルネ伯爵に随伴して4カ月のモロッコ旅行に出掛けていますが、これは彼の生涯において決定的な意味を持ったようです。アフリカ大陸独特の、照りつける太陽の光と色彩の明るさに感激したドラクロワは500点にもおよぶスケッチを残しています。この作品は、その旅行を記念して制作されたものですが、特に許しを得て女性たちの部屋を見せてもらった折に着想を得たと言われています。
 画面全体が燃えているように鮮やかで、女性たちの衣装も顔立ちもとても美しくて、ドラクロワがその明るい色彩の波に狂喜している様子が感じ取れます。
 「見るものすべてに圧倒されています」とパリに書き送ったドラクロワのパレットは、この旅行でいっぺんに豊かさを増したのでしょう。どんな人間にもそうだと思いますが、旅行は人生の中で一つの転機となる要素を多分に含んでいるものなのです。

 しかし、ドラクロワが色彩に対して鋭敏だったのは、この旅行に始まったことではありません。初めから彼は色彩画家であり、そして近代色彩論の先駆者と言ってもよい存在だったのです。
 ある日の夕暮れ、黄金に輝く馬車がドラクロワの目前を通り過ぎたとき、彼は紫を感じたといいます。黄色と紫の対比関係をパッと感じたのです。そして彼は、色は単独ではなく、色と色の関係が微妙な効果を生むことを知ったのです。こうしてドラクロワはさらに、赤と緑あるいは青などの対比が色調に鮮度を加えることを知るようになります。そしてこの手法は、やがて19世紀後半の印象派の画家たちにも大きな影響を与えることになるわけです。
 この「アルジェの女たち」にしても、ルノワールに大きな感動を与え、ルノワールはこれをもとにして「アルジェリア風のパリの女たち」という作品を描いたほどです。それを考えると、ドラクロワの感覚がどれほど磨かれた新鮮なものであったか、あらためて実感させられます。

 セザンヌは次のように言っています。
「ドラクロワのパレットは、今なおフランスのもっとも偉大なパレットである。静寂で悲劇的な作品においても、躍動する作品においても、ドラクロワほどに豊かな色彩を駆使した画家はこの世にいない。我々はみな、ドラクロワを通して描いているのだ。」
 生涯を絵画に捧げたドラクロワに、これ以上の賛辞があるでしょうか。

★★★★★★★
パリ、ルーヴル美術館蔵



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