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「オフィーリア」

アーサー・ヒューズ (1852年)

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 王妃ガートルードによって、オフィーリアの死は知らされます。ハムレットに捨てられ、父を殺されて気がふれたオフィーリアが、花輪を枝にかけようとして花輪もろとも川に落ちて流されていくさまは、多くの画家にたくさんのインスピレーションを与えてきました。
 そんな美しい作品群の中でも、このアーサー・ヒューズが描いたオフィーリアは、多くのファンを持つ作品の一つです。片腕に花束を抱え、水面(みなも)を見つめるオフィーリアのはかなげな姿は、見る者の胸を締めつけます。フクロウの舞い飛ぶ薄暗い森で、川の流れに花弁を投げ入れるオフィーリアの心は、すでにこの世の何物をも認知することができなくなっているようです。
 この作品は、有名なジョン・エヴァレット・ミレイの「オフィーリア」と同じ年のアカデミー展に出品されました。それは全くの偶然でしたが、19世紀になってシェイクスピア劇の絵画化が盛んになり、殊にオフィーリアをテーマとしたものに人気があったことも大きな要因でした。

 ヴィクトリア女王の治世、ヴィクトリア朝(1837-1901年)のイギリスでは、産業革命によって商工業が大発展しました。そして、かつてないほどに美術が流行したのもこの時期で、各地に美術館がつくられ、複製画が出回り、多くの人々が美術を手軽に愛好するようになりました。
 しかし、こうした資本主義社会の出発点と言われる時代の始まりには問題も多かったようで、中産階級が富を享受する一方、労働者階級の貧困は深刻で、社会の乱れも指摘されるようになります。
 そんな中、一種の理想主義へと逃避する人々も多くなり、中世や古代ギリシャ・ローマ、アーサー王伝説などが再評価される復古趣味が流行するようになりました。それが文学や美術の主題にも反映されるようになったのです。

 そんなヴィクトリア朝を代表する画家の一人アーサー・ヒューズ(1832-1915年)はロンドンに生まれ、ロイヤル・アカデミー・スクールで学んでいます。18歳のときに季刊誌「芽生え」を読んで感銘を受け、ラファエル前派の画家たち(ロセッティミレイ)と親交を深めました。
 ラファエル前派とは、19世紀アカデミーにおける古典偏重の美術教育に異を唱え、ラファエロ以前の自然で素朴な絵画への回帰を目指した運動です。ヒューズは彼らから、鮮やかな色彩と、自然を忠実に描こうとする姿勢を学んでいきます。彼がラファエル前派に参加することはありませんでしたが、この「オフィーリア」は、ラファエル前派風の作品の第一号であったと言われています。
 ヒューズは、芸術家としては珍しく、大変穏やかで優しい人柄でした。6人の子供をもうけ、妻を愛し、晩年は郊外で静かな人生を送ったと伝えられています。

★★★★★★★
イギリス、 マンチェスター市立美術館美術館 蔵

<このコメントを書くにあたって参考にさせていただいた書籍>
  ◎西洋美術館
       小学館 (1999-12-10出版)
  ◎西洋美術史(カラー版)
       高階秀爾監修  美術出版社 (1990-05-20出版)
  ◎オックスフォ-ド西洋美術事典
       佐々木英也著  講談社(1989-06出版)
  ◎週刊美術館「ロセッティ ミレイ」
       小学館(2000-6-13出版)



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